巨大な商業利益を生むフラッシュ動画

マッチスティックマンの作者の小小(本名は朱志強)がナイキを訴え,北京市第一中級人民法院が受理した事件は,フラッシュ動画がもたらす,巨大な利益がからんでいるらしい。2003年にマトリックス3リボリューションズの上映前に,スポンサーのひとつであるオランダのビール会社ハイネケンheinekenが映画の宣伝のために小小に依頼してマトリックスの内容に基づいた2つのマッチスティックマン作品を作って,メディアで流している。しかし,ナイキのCMのおかげで,マッチスティックマンを使って宣伝をしようとしていた会社が小小との商談をやめた事例がある。小小は,自分の利益を守るため弁護士事務所に依頼して律師函(Cease and Desist Letter)を送り,ただちに著作権侵害をやめるよう要求し,さもなければ,自己権益を守るため法律手段に訴えると警告した。しかし,ナイキ側は弁護士事務所へのファックスの中で,マッチスティックマンの造形にはオリジナリティーが極めて少なく,版権保護の対象になるには不十分で小小の権利侵害にはあたらないと,ほとんど何ともないことのような態度を取った。ナイキはCMの小黒人の生みの親はヨーロッパにいてナイキと作者は使用許可契約にサインしているとしたが,弁護士がさらにその許可契約を提出するよう要求するとナイキからの返事はなかった。それで,小小と弁護士は無断でシリーズ作品中のマッチスティックマンのデザインを広告に使ったとして,ナイキを著作権侵害で訴え,200万人民元の損害賠償を求めた。
また,小小は,2001年には早くもシリーズ作品を収めたCDを携えて長春市版権局で作品登記をしている。マッチスティックマンのトレードマーク登録ももうすぐ完了する。
デザインを侵害されて裁判で勝った事件では,中央民族大学教授で著名な書道家の関東昇がアメリカのダウ・ジョーンズを無断で“道”の字をロゴに使ったとして訴え,ダウ・ジョーンズは40万元あまりの賠償命令を受けた先例がある。フラッシュの商業価値を語るとき避けて通れないのが,韓国のキム・ジェインのマシマロ(流氓兔)だ。マシマロは,フラッシュに止まらず文具やおもちゃ,服装,飲食などの業界を巻き込んで,中国で半年の間に約8億人民元を稼ぎ出し,キム・インジェはプー太郎から一躍億単位の漫画家になった。業界人によれば,一秒のフラッシュ動画で少なくとも,3000元の儲けになるという。そして一回100分のフラッシュの短編になると1分あたりの制作コストは約8000元ぐらい,10人のフラッシュ制作グループ(演出とその他の非制作人員を含めず)だと,普通なら一日に3分間ぐらいのフラッシュ短編が制作できる。フラッシュ動画のもたらす巨大な商業利益は言わずもがなである。小小はすでに,マッチスティックマンのためのすばらしい未来図を描いているが,それも,この訴訟に勝った上での話だ。
http://d.hatena.ne.jp/huixing/20040115#p2